アンタッチャブル

 私の家の斜向かいに住まっている男はアンタッチャブルである。
 日本語で、不可触民と書く。意味は読んで字のごとく。触っちゃ駄目な人。

  なぜかは知らない。ただ、法律でそう決まっているのだ。

 玄関先での挨拶ついでに、つらくないかと聞いてみた。彼はにっこり微笑みこう言った。

「あなたに、これを上げます」

 それは、奇妙な印象を受ける物体だった。拳ほどの大きさの、金属製の円筒。

「これは致死性の細菌ガスの入ったグレネード弾です。使うためには、僕の家にある銃が必要です」

 ぽかーんとする私に、彼はにっこりと微笑んで告白してくれた。

「僕は今、これを使って世の中に復讐しようと思っていました。
でも、あなたが僕を気遣 ってくれたから、やめます。その誓いに、それをあなたに預けます」

 私は家に帰ってから、危険人物が居るといって警察に通報した。

 擲弾を差し出した彼の、ピンク色の掌を思い出す。私と何も変わらない。ただ法律上での差。

 しかし中味は明確に別物なのだなぁ。被差別民の歪み具合に驚いた今日の日。

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