クササササムトネイティジー

 クササササムトナは飛べない鳥である。亜熱帯気候地域の内陸に生息していて、春に生まれて9~14年ほどで死ぬ。事故でもよく死ぬ。一度の産卵では決まって二個の卵を産む。卵の表面はアスファルトに似た質感で、工事現場などではまず発見することは出来ない。これはクササササムトナの一生を支える擬態能力の始まりである。

  孵化したクササササムトナは、成長段階に応じて三つのものに擬態する。

 生まれたばかりのクササササムトナは、深緑色の細長い羽毛に覆われており、一見して草である。アスファルトの隙間に生えた雑草のいくつかは、クササササムトナの幼鳥の擬態である。その擬態は完璧で、草むらに居ると虫が寄ってくる。その虫を餌とする。

  生後半年ほどで、クササササムトナは猫に擬態する。

 猫である。

 この擬態は実に特殊で、嘴が変形して牙になり、肉が盛り上がり猫の頭や腕、脚の形を取る。見た目だけならば完璧な猫である。

 クササササムトナはこの状態で死期が訪れるまでを過ごす。この期間には人間に飼われていることも多い。もし鳥を狩らない猫を飼っているのなら、それはクササササムトナかもしれない。よく監察していれば、アスファルトの塊のような卵を産み捨てる姿を見ることができるかもしれない。

  死期が訪れると、クササササムトナは猫の姿をやめる。

 最後にクササササムトナが擬態するのは土である。表面の羽毛は微細なパーマが掛かったようになり、外見上は土の塊となる。クササササムトナは土の上で死ぬ。クササササムトナ固有の酵素によって、死体はおよそ二十四時間で分解され、骨まで虫の餌になる。後には羽毛が残るが、土と見分けがつかないので、そのまま土になる。

 クササササムトナは絶滅寸前である。


(了)

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