たくあんの実

 山道の真ん中に、木が一本生えていた。丈は大人の肩くらい。色は枯れ色、葉花は皆無。
細い幹から、か細い枝が、寒々しくも生えている。

 さて、花も葉もないその木だが、実のようなものが成っていた。
色は黄土でしわくちゃで、形は蛇の尾のようで、丈は大人の腕くらい。
言ってしまえばたくあんだ。妙ちくりんな実であった。

  木の目の前には看板が。

「死ぬ故この実、食わすべからず」と書いてある。

 男が一人、その木の前を通りかかった。男は目を留め足を止め、
看板と実をしげしげ眺めた。そうしてからその実をぶちっともいで、荷物に挟んで家に帰った。

 男は自分の知り合いに、旅の土産のたくあんだと言い、もいできた実を手渡した。
遠くの町のセリ市で、奮発してきた珍品なのだと恩着せがましく言い添えた。

 さて翌朝、その知り合いの家に医者と警察が詰め掛けた。彼は朝食に例の実を食ったらしい。
すぐに男の家へ警察がやってきた。神妙な顔つきで対応する男に、警察は事態を説明した。

「最近ここらでは毒殺が多いのだ。だが毒殺は犯人が探しづらいのだ。そこで、
すぐさま警察へ通報するようメッセージを埋め込んだたくあん一本、毒と偽る看板つきで、
山の途中に仕掛けておいた。食った奴は無事だがお前は死刑だ。毒殺抑止の一環なのだ。
『死ぬ故この実、食わすべからず』とあっただろうに」

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